永遠回帰2
神子殿の遺体は綺麗に血も拭われ、ただ眠っているように見えた。
しかしその目蓋がもう一度動くことはない。あの炎を宿した瞳に俺が映ることもない。
これはあんまりではないか。
戦は終結を迎え、俺は死の瞬間を味わうことはなくなる。俺の望んだことは何一つも叶わなかった。
「神子殿は満足か…?」
遺体に声をかけても返事はない。分かりきっていることだ。それでも尋ねずにはいられない。
あの瞳は確かに『生』に執着した者の瞳だった。何よりも生きたいという意志を強い者だったはず。
だからあの瞳に囚われたというのに。
出会ってからそんなに経ってはいないだろう。それなのにどうしてこんなに様々な記憶が残っているのか。
あの瞳に俺を映すことをどれだけ至福に感じていたか、神子殿は知らないのだろう。共に舞ったあの時のお前の瞳は、今もこの胸を熱くするというのに。
それを見ることすらもう叶わない。
季節が巡るかのように移り行く表情にもう二度と会うことはないのか。
「神子殿…どうしてお前は…」
あれほど『生』に執着していたお前が一体何故。
俺が生きる未来など必要なかった。必要だったのは神子殿…お前だったというのに。
「…これは…」
これは神子殿が大切に持っていたもの。首から下げて、最後まで決して手放そうとはなかったもの。
物に執着はしない主義だが、これは気になる。不思議と指がそれに触れようとしている。
触れると同時に光り出す。視界が消えていく。代わりに表れたのは…。
「ここは…?」
ここは福原・・・なのだろうか。平家が捨てた都。しかし、先程いたのは、ここから遠い…。
「…クッ…そういうことか…」
これで神子殿が言っていた、違う『俺』というのも納得がいく。これは過去や未来にいく為の物だ。
これを使えば、神子殿が生きる未来を手に入れられる。
生と死の狭間の高揚感も味わえる。
いや、神子殿の…望美のあの瞳に自分が映せれば、それでいい。
「…魂まで射抜くような瞳で俺を見てくれよ・・・神子殿」
自分の命を代償にしてでも、手に入れる…。
俺だけの願いを…。
あとがき
出来上がりが微妙な気がすごく・・・死ネタ嫌いとか言っておきながら、これって死ネタですよね?あはは・・・知望の死ネタは好きだったりします。本当はもっと狂気的な感じにしたかったんですけど、これが今の私の限界みたいです。ハッピーエンド大好きっ子には、あんまりバッドエンドを考える脳がありません。切ないのも大好きだから、スタートどんよりはいけますけど(笑)
ここまで読んで下さってありがとうございます。
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