あの人が私の父となった時に、既にあの人は私にとって絶対無二の人だった。



もう一度会えたなら



 燃えゆく周りを見渡しながら、ナーサティヤは思う。今の皇は間違っている。それはナーサティヤ程の人物であれば誰に言われなくても分かっている。それでも皇を裏切れないのは、単なる皇への忠誠からではない。

 皇はナーサティヤの本当の父ではない。ナーサティヤの父は今の皇に殺された。そのことでナーサティヤが皇に二心を抱いていると言う周囲の重臣達も少なくはない。だが、ナーサティヤはそんなことを思ったことは一度もない。
何故なら父が殺された瞬間をナーサティヤは傍にいながら、見てはいないのだ。
父が「見るな」と言った通りにナーサティヤは父から目を背けた。全てを見ないようにした。しかし父が殺されると音を聞けば十分に分かる。いくら子どもとは言え、それくらいは分かる。それでも動かなかったのは父への忠誠からか、それとも違う感情からなのか分からなかった。
それを皇は父への忠誠だととり、ナーサティヤを褒めたのだ。敵である父の子であるナーサティヤを、本当の子どもと変わらぬ扱いをしてくれた。
その気持ちに応えたい。その一心で剣を振るい、全てを捧げた。その感情の中には単純に忠誠からというわけではなかったが。

 おそらくこのままいけば常世は滅びる。いや、新しい常世に生まれ変わる。皇の子であるアシュヴィンの手によって。それを恨むような気にはならないし、ナーサティヤもそうなることを少しだけ望んでいた。

 ナーサティヤには皇は裏切れない。皇はナーサティヤにとって父であり王であり、全ての頂点に立つ人だ。誰が裏切ろうともナーサティヤだけは最後まで皇を守る盾であり、敵を排除する剣なのだ。それは常世の皇だからではない。皇…スーリヤだから守るのだ。

 憧れだった。獅子王と呼ばれるスーリヤが、血は繋がっていなくとも子だと彼に言われることが誇りだった。いつかムドガラのようにナーサティヤも信頼される臣となりたいと思っていた。その気持ちは滅びゆく今でも変わらない。この身が消えてしまってもこの想いは残る。そう信じたい。



 ナーサティヤは息苦しくなって目を閉じる。大分酸素が少なくなってきたのだろう。こんな時でも考えるのは皇のことばかりだ。いや、死ぬ間際だからこそそう思うのかもしれない。


 あの頃の皇に会いたい、とナーサティヤは思う。獅子王と呼ばれ、誰からも敬われた皇に会いたい。今の皇は皇ではない。何か別の者だ。それがあの黒い太陽のせいだと分かっているのに、ナーサティヤには何も出来なかった。
 神への畏れからではない。皇に剣を向けることが出来なかったのだ。皇に剣を向けるぐらいなら、現状で良いと思う。常世の民より皇をナーサティヤは選ぶ。誰にどう責められようと、この気持ちは変わらない。この気持ちの先に何があるのかは分からないが、未来などどうでもいい。守りたい今を失うなら未来などいらない。皇を失うぐらいなら世界などいらないのだ。

「…貴方に…会いたい…」

もう会えないだろうけれど。


おそらくナーサティヤはこのまま死んでしまうだろう。しかしどうか皇は生きていてほしい。中つ国の二の姫が黒き手の王であることを、皇の救い手であることを切に願う。









燃えていく祭壇を見ながら思う



せめてこの想いが皇の助けになれたら良かったのに。


















あとがき

 久々の更新がこれってどういうことなんだろう、私。おそらく読んで下さってる殆どの人がこう思う筈です。
 お前どうした?
 自分でも分かりません。ある日突然ふってきたんです。仕方ないよね、サティは私のエンジェルですから(何言ってんの)
 ある日突然、あ、ナーサティヤって皇のこと愛してるんじゃないか、と思ったわけです。
 あれだけ常世の民を愛しているナーサティヤがそれでも皇を止めないって理由があるに違いないですよ。忠誠?そんな生ぬるい感情ではなく、心の底から愛してるんですよ!
 つまり私の中の人間模様でいくと、ムドガラ×皇←サティ←エイカです(そこまでは誰も聞いてないよ) エイサティ派なんです、サティエイではないんです。
 でもラブラブなラジャサティも書きたいな!もう本当に私死ねばいいね★
 ・・・誰か同じように思ってる人はいないのだろうか・・・。






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