間話1
※祟ゆき
※読まなくても大丈夫です。
きっとまたやり直せる、そう思っていた。
「お姉ちゃんがいなくなれば、僕は幸せになれるよ」
祟はゆきにそう言った。それは少なからず、ゆきに衝撃を与えた。祟はゆきにとって、かけがえのない人間の一人だった。
ゆきには嫌いな人は殆どいないが、特別好きだと思う人も少ない。特別なのは瞬と都、そして祟だ。三人はゆきとずっと一緒にいてくれた。それぞれ思うところは別にあったかもしれないが、それでも傍にいてくれたことは、ゆきにとって重要なことだった。両親共に忙しかったゆきにとって、それこそが重要だった。どんなに好意的な言葉や態度よりも、ゆきにはそれが嬉しかった。
特に祟はゆきを本心では優しいと思っていないことに、ゆきは気付いていた。甘えはするものの、ゆきが優しいからではない。ゆきが誰にでも甘い顔をすることを知っていて、祟は甘えてきた。
真意は知らない。だが、ゆきはその真意を知ろうとは思わなかった。ゆきの本当の部分を知っていて尚、ゆきの傍にいてくれる祟が、ゆきには何よりもかけがえのない人だったから。ゆきは祟の闇の部分を見て見ぬふりをした。失うことが恐かったから。
だが、それがいけなかったのだろう、とゆきは思う。もっと早くに気付いていれば、祟も、そして瞬も失わずに済んだかもしれない。そう思っても、既に遅いのだ。
「ごめんね……」
ゆきは音もなく崩れ落ちる。命がもう幾ばくもないことは、ゆき自身がよく分かっていた。それでも失えないものがあるから、もう残り少ない命を使って、龍馬を過去へ送った。自分ではなく、龍馬を送ったのにもいくつか理由がある。
一つは命が残り少ないこと。過去に戻ったところでゆきはいつまで生きていられるか分からない。決戦まで保つかどうかも分からない身体では足手まといだろう。だが、ゆきはそんなことを瞬時に考えていたわけではない。一番の理由は瞬にある。
瞬はゆきにずっと優しかった。本当の妹以上に愛してくれた。それが等身大のゆきよりも過大評価したゆき像であったとしても、ゆきを愛してくれた。ゆきがどんなに甘えても、瞬は幻滅したりしないことをゆきは知っていたし、その点に甘えていた。だが、甘えていた反面、ゆきも瞬を本当の兄以上に愛していた。血の繋がりはなくとも、兄妹以上の絆がそこにあった。
そんな瞬の幸せを、ゆきはとても望んでいた。瞬と龍馬の間に何らかの絆が芽生えていたことくらい、ゆきも気付いていたからこそ、龍馬を過去に送ったのだ。この時空のことを知っている龍馬がいれば、二人の運命は変わるに違いないと、ゆきはそう信じている。きっと次こそ幸せになれるのだと。
「ごめんね……瞬兄…祟くん……」
この時空の二人を救うことが出来なかったのは、ゆきの業だ。一番気付くべきはゆきだったのに、気付けなかった責は自身にあると、ゆきは思うから、命を懸けてでも償わなくてはいけない。いや、ゆきは償いたかったのだ。
「……今度の私は……うまくやれるかな……」
龍馬が出会う次のゆきが、瞬や祟を救うことができることを祈りながら、ゆきは目を閉じる。
死は恐くなかった。大切な人に会えない苦しみに比べれば。
「……会いたいよ……祟くん、瞬兄」
きっと同じところにはいけないだろうけれど。そう思ったところでゆきの意識は途切れた。
あとがき
はい。祟ゆきでした。読まなくても、何とかなります。はい。
ただ、ゆきちゃんが何故命をかけて龍馬さんを戻したのか、瞬兄が恋愛感情的な意味だけではなく、大切ではパンチが弱いかなぁというのと、命を懸けたゆきちゃんにもその分の幸せを掴んでほしいのと、祟くんも仲間に入ってほしい、幸せになってほしいという気持ちもあり、祟ゆきです。
祟ゆきはたぶん、瞬兄ルートの延長だよなぁって思ってます。ただ、公式はそうじゃないと信じたい。そんなありきたりなルートいらないwww
ただ祟ゆき+瞬兄は何気に美味いと思います。瞬兄はどのルートでも娘を持つ父親ポジションに近くあってほしいけれど、弟相手なら本気で邪魔できるもんね!!本気で邪魔する瞬兄にhshs(^q^)
ここまで読んで下さってありがとうございます。
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