忘れられない



























拝啓 故郷にいる姉上様

今、すごく綺麗な自分の対に迫られてますどうしよう。













 龍馬の自分の対に対する第一印象は、冷たい、というよりも先に“こんな綺麗な人を初めて見た”だった。男性のみならず、女性を含めても、あそこまで完成された美しさを、龍馬はかつて見たことがなかった。スラリと伸びた四肢、整った顔立ち、髪や瞳の色の美しさ、所作の上品さ、どれをとっても美しかった。完成された美しさを万人が好むわけではなかったが、龍馬はその美しさに感動したのをよく覚えている。
 そして、彼の対、瞬と何らかの縁もあって、共に行動するようになり、印象もいくらか変わったが、冷たい美しさは健在だった……筈なのだが。

「しゅ、しゅん……っ?」
「龍馬……」

 いつもは冷たい視線ばかり寄越す瞬の紫色の瞳が、何だか今日は熱っぽい。龍馬の名を呼ぶ声も甘い。何故、と普段はよく回る頭が同じ言葉を繰り返す。
 だが、龍馬が混乱している間に瞬の手は龍馬の方に伸びる。

「瞬……っ?お前、怨霊かなんかに……?!」
「違う」

 そう否定する瞬の顔が、龍馬に近付いてくる。いつもの表情より、何倍も甘い表情をしていて、こんな表情も出来るのか、甘い表情というと、デレデレとしたものを想像しがちだが、瞬の顔は綺麗だ、などと思ううちに、唇に柔らかいものが触れる。それを口付けであることを察するのに、それほど時間はかからず、これが意味することを、龍馬はこれまでの29年生きてきた経験から流石に察することが出来た。

「ん、ぅ……しゅんっ」
「りょ、ま……んっ」

 単純に瞬が龍馬を好きだと考えられるし、仮にそうでなくても、これ以上は龍馬も我慢出来そうもなかった。
 目の前にいるのは、普通の人ではない。尋常ではない美人なのだ。そしてその美人がいつもより可愛い顔をして、少し顔を赤らめて、迫ってきている。心なしか瞳も濡れていて、これを目の前にして、手を出さない男がいるだろうか。いや、女であっても、きっと手を付けるに違いない。
 龍馬は瞬の腰に腕を回し、瞬の口付けに応える。それを瞬は刹那、ピクリと反応したが、そこがまた龍馬の胸をときめかせた。
 そのまま、引き寄せ、ゆっくりと寝かせると、瞬の瞳に戸惑った色を映したが、瞬が嫌がる様子は見せなかったので、龍馬はそのまま続行することにした。






「皆、瞬兄のことを覚えていないの……?」

 ゆきが絶望的な表情を浮かべ、それを龍馬は悲しく思うが、その人物を思い出せない。

「龍馬さん、覚えていませんかっ?龍馬さんの対の八葉を……」
「対……」

 何かもやもやとしたものが頭の中にあるのは確かなのだ。何だったか……と、悩んだ瞬間、あの夜の情景が頭に浮かび、カッと龍馬の頬が熱くなる。

「あ、ぁああっ!!」
「龍馬さん?」
「ちょ、ちょっと、お嬢、頭を冷やしてくる……!」

 このままでは別の所も熱くなりそうだと龍馬は一旦、外に駆け出た。が、それについて来るのがゆきだ。

「龍馬さん?」
「お嬢?!」
「その、急に駆けていくから……」
「あ、ああ……いや、何でもないんだが、その……瞬のことだよな?」
「思い出したんですか?」
「ああ。思い出した」

 随分と煩悩に正直な形で。
 二人で手分けして、いなくなった瞬を探すことにし、そして龍馬にとって運が良く、瞬に遭遇することが出来た。

「瞬!」
「っ!龍馬?!」

 まさか龍馬が訪れるとは瞬も露ほども思っておらず、驚きを隠せなかった。

「何故……」
「そりゃ、お前……あんな」

 龍馬は少し口ごもったが、あっさり口を開いた。

「あんな、色っぽいことがあればなあ……」

 思い出すだけで、熱くなるような、そんな夜のことを忘れることなんて、男、坂本龍馬、無粋な真似はしない。

「……は?」
「俺の人生で一番忘れられない夜だった。ただでさえ、お前さんは俺が出会った中で一番綺麗な奴なんだ。そんなお前が、あんな風に熱っぽく迫ってくるなんて、瞬より長い人生を生きてきたが、一度もないような夜だ。忘れられるわけが……」
「〜〜〜〜っ」

 龍馬の目の前の男が、珍しく取り乱し、顔を真っ赤にしている。そして、それの半分程度が怒りであることが、すぐに龍馬も分かり、少しだけ後ずさった。

「お前、そこだけ覚えていないのか……?」
「いや、ちゃんと他のことも思い出したぞ?ただ、一番最初に思い出したのがそれだっただけで……」
「……最初がそれだと?」
「あ、いや、あまりに衝撃的で……瞬があんなに色っぽいなんて」
「ふ、ふざけるなっ!」





 そうして、言い合いならぬ、瞬が怒り、龍馬が一方的に謝るということを繰り返しているうちにゆきが合流し、瞬は無事()戻ってくることになった。




































あとがき
 大事な人ネタを龍瞬でやろうかとも思ったんですけど止めました。そこまでやってしまうと公式への冒涜かなと思ったw

 後半ぐてってますけど、割といつものことです、サーセン。改善しないと……とも思うんですけどね。

 瞬兄のイベントが切なかったんですけど、うちの龍瞬なら絶対自力で思い出せる!って思った結果がこれでしたww いや、思い出しますよ!ただ、龍馬さんは結構煩悩も多そうだから!と思ったらこうなりました。お前wwと思った人はいっそ私の頭を流星の弓矢で打ち抜いて下さい(何故ここで譲のキャラソンが出てきたのかは本人にも分かりませんw)。

 瞬兄は龍馬さんが忘れちゃうなら、一晩くらい過ちを犯したれ!と思って手を出しました。瞬兄が龍馬さん好きな状態です。くっそ、羨ましいな、龍馬さん!俺と変われ!
 ですが、瞬兄も男なので、本当は抱く気でした。が、逆転されましたw うちの龍瞬ってこんな感じですよ。別に瞬兄は龍馬さん、抱けますよ。ただ、龍馬さんは抱きたい派を頑なに譲らないので、この力関係におさまってるだけなんだと思ってます。思ってるだけですけどw

 個人的には瞬兄に迫られたい、そしてその瞬兄を鳴かしたい。そんな願望がいっぱい詰まってしまっています。ごめんなさい。でも同士はいるって信じてます。

 ここまで読んで下さってありがとうございます。















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